市町村合併リポート ー後編ー

5.合併市のシミュレーション

苫小牧東港と火力発電所

・苫小牧東港と火力発電所

苫東工業基地のシンボル日邦バルブ

・苫東工業基地のシンボル
 日邦バルブ

フェリーから降りて目的地へ向かうトラック

・フェリーから降りて目的地へ
 向かうトラック

両市が合併したらどうなるのでしょうか。
いくつかの分野で、具体的にその姿をシミュレーションしてみたいと思います。

苫小牧市

北海道最大の国際港湾を持つまち。
港湾物流のまち。
紙パ、自動車、電力、金属などの重厚長大産業が集積した生産都市、工業都市。

千歳市

北海道最大の国際空港を持つまち。
空の物流、人的交流の盛んなまち。
自衛隊のまち。電子、精密機器、製薬、飲料など軽薄短小型産業が集積する研究開発と技術力のまち。
 
このように異分野での発展を個別に遂げてきた両市の産業を結びつけることができたとしたら、持てる全てのポテンシャルをより有機的に拡大、発展させることになり、かつ相互補完することになるのです。

この点についてそれぞれのの領域や分野における特徴的な項目を上げて比較してみます。
▼表1▼表2  

さらに、経済、産業の分野に限りもう少し詳しく分析してみます。まず、製造業における業種別の状況について主なものを取り上げます。
▼表3

臨空工業団地に進出

・臨空工業団地に進出

岩塚製菓臨空工業団地に進出

・岩塚製菓臨空工業団地に進出

日立国際電気空陸の自衛隊基地

・日立国際電気空陸の自衛隊基地

比較的出荷額の大きいものだけを取り上げましたが、両市のトータルは、北海道全体の製造出荷額5兆7,137億円の15.4%にあたります。そして特徴的なことは、隣接するまちでありながら業種の棲み分けが計ったようにできていて競合する部分が比較的少なく、補完、拡充する部分が多いということです。
また、合併により、人口26万を超す都市が誕生することになりますが、同規模の函館市、旭川市と比較したらどういう特徴を持つまちになるでしょうか。

▼表4
函館、旭川、札幌3市と合併市を比較してみましたが、特筆すべきことは、製造業の分野において函館や旭川をはるかにしのぐ出荷額を持つ都市が誕生するばかりでなく、人口で7倍の規模を持つ札幌市をも上回る北海道一の生産都市になることです。札幌の対抗軸としての機能を十分果たすことが可能になるのです。

あわせて「水産と観光のまち、函館」「商都、旭川」「消費、流通都市、札幌」とそれぞれの都市の特色がこの調査には明確に表れておりますが、「生産と物流のまち、苫小牧・千歳」も三市に互して明確な輪郭を持った都市として浮かび上がって来るではありませんか。  

ところで、北海道最大の港湾と空港を持つ両市ですが、それぞれの貨物取扱実績を比較してみることにします。
▼表5

また、港湾や空港の周辺には、工業団地が造成され企業が進出しています。苫小牧港(西港)臨海部には57箇所、476,278,840千円の、苫東(東港)には18箇所、88,345,430千円の出荷額があります。
一方、千歳臨空工業団地には31箇所、97,600,000千円の出荷額があります。
それぞれ空と海の輸送手段に見合った製品をつくる企業が進出しておりますが、今後、それぞれの企業間のコスト削減に向けた提携や物流ルートの確保のための道路整備などハード面と合わせ、空と海の物流の有機的結合に向けたソフト面の整備もとりくまなければならない重要な課題です。

東京、大阪を例にあげるまでもなく我が国の経済拠点には国際港湾と国際空港が同じまちの極めて近い距離に整備されており、生産だけでなく物流機能も合わせ持つことによって一大発展を遂げているのです。

また、アメリカ西海岸の国際港湾都市シアトル市と世界最大の航空産業ボーイング社のあるタコマ市は隣接する都市ですが、空港と港湾の機能を統合して成長させるために、空港名をシータックと両市の頭の部分を取って命名しておりました
。この例にならえば北海道経済の発展を考えた時、国際港湾空港を同一の市で一体的に運営することができたなら持てる能力を発揮する割合は飛躍的に向上するはずです。

6.ニューフロンティアシティの創造

新しいまちは、およそ次のようなコンセプトで創造されていくことになろうかと思います。

基本的方向

  • 千歳市街地・新千歳空港・苫小牧港・苫小牧市街地・苫東を有機的に結合し、北海道経済をリードする生産、物流基地を形成し、民間活力の導入を図り空港と港湾を一体的に運営する新時代の国際交流都市。
  • 空港と港を核とした経済特区など経済活性化対策を有効に活用しながら、オフィスアルカディア、エアロポリス構想、苫東開発など既存のプロジェクトとの調和をはかる開発都市。
  • 若者に勇気と希望を与え定住を促進するような雇用環境を創出し、千歳科学技術大学、苫小牧駒澤大学、苫小牧工業高専などとの連携を図りながら、知能と技術の集積を高め、先人の功績をたくましく発展させる努力を怠らない未来都市。
  • 樽前山、支笏湖を都市のシンボルとし、豊かな海と空の恵みを十分に享受しながら四季折々の潤いに満ちた自然環境の中で市民が生き生きと生活することができ、地球の一員として自然と共生していく環境都市。
  • 世界の文化、芸術、スポーツとの直接のふれ合いを通して生活の質を高め、文化の創造と教育を充実し、優しさと思いやりに包まれて快適に生活することができる福祉文化都市を目指していきます。

7.合併にむけた手法

平成14年5月、北海道知事は、道内の四港が名乗りをあげていた静脈物流拠点港について、苫小牧港と室蘭港に絞り込むことを決定し、国に指定を要請することになりました。これで苫東はリサイクル産業の誘致やリサイクル基地の形成に向け、大きな前進をすることが約束されたのです。
すでに立地している家電や建設廃材、プラスチック、ペットボトルのリサイクル企業に加え、自動車やPCBなど、幅広い分野でのリサイクルが可能になるよう努めるべきで、多くの工場を持つ千歳市も含めた道央圏のリサイクル、資源循環型社会の構築に寄与することは、言うまでもありません。

また、国が経済活性化の手法のひとつとして推進しようとしている構造改革特区は規制緩和や撤廃によって、競争力の向上や新たな産業の創出、雇用機会の拡大を狙ったものです。
道では、これに呼応してベンチャー創出特区、エネルギー特区、農村再生特区などの構想を打ち出しております。苫小牧市の経済界ではこの特区を地域経済再生の好機と捉え、指定に向けて動き出しております。
港の物流を核とした国際交流をコンセプトとしているようですが、私はこれに空の物流と天然ガスの多角的活用を研究開発するエネルギー特区も加えられないものかと考えています。
国際港湾と国際空港がこれ程近い距離に位置し、新エネルギーを豊富に埋蔵している都市は日本全国でも他にありません。リサイクルやコンテナ物流のコンセプトで指定を目指す北九州市にも、近い所に国際空港も新エネルギーもないのです。私たちの利点を最大限に活用すべきであると考えます。

廃プラスチックを燃料として発電する:サニックス

・廃プラスチックを燃料として発電するサニックス

新エネルギーとして期待される天然ガス

・新エネルギーとして期待される天然ガス

ペットボトルをリサイクルする:明円工業

・ペットボトルをリサイクルする明円工業

行政上の課題もたくさんあります。まず所属する支庁の問題があります。
両市は隣接しながら胆振支庁と石狩支庁に所属しています。
合併したら一体どちらの支庁に所属することになるのでしょうか。こういう疑問も湧いてきます。
しかし、これはさほど大きな問題ではありません。いずれ市町村合併と並行して支庁改革の問題が議論されることになり、支庁も現行14支庁から大幅に見直されることになるでしょうから、その過程で解決されることと思います。問題は、別にあります。

新千歳空港の滑走路延長問題で、両市の間に大きな溝ができてしまったことや、合併に対して必ずしも前向きではない市民感情が存在することです。
これは、なるべく早く是正しなければなりません。そのためには、当事者である両市がきちんと向き合うことからはじめて、意志疎通をもっと図るべきではないでしょうか。

また、国の管理する空港ですので、国の航空行政にも言っておきたいことがあります。
千歳空港の格付けについてですが、国内路線数では羽田に次ぐ第2位でありながら、現在の第七次空港整備5ヶ年計画においては新潟や広島と同格の地域拠点空港でしかありません。
しかし、平成15年からはじまる八次空整では主要地域拠点空港にアップするのです。確かに利用度に応じて位置づけが変わるのは柔軟な姿勢かもしれませんが、逆に言えば理念がないとも言えるのです。

千歳空港を国としてどのように位置づけて活用しようとするのか、方向が見えないのです。韓国・仁川空港や中国・上海空港の例をあげるまでもなく4,000メートル級の滑走路を何本もつくり、アジアのハブ空港を目指し国策として空港行政を推進しようとしている国に対抗できなくなるのは当然のことです。
航空政策を場当たり的、時間つなぎの細切れの対応策にしないで、10年、20年のビジョンをきちんと示して住民の理解を得なければなりません。

一方、隣接するまちであるということは、広域行政のチャンスも多いということです。
空港を核としたまちづくりや港と空港の連携、職・住に関する市民サービスの共同化、両市境界地区の自然環境の保全や観光の振興など広域的に取り組まなければならない課題はいくつでもあります。
広域行政を通して課題の解決を図りながら相互理解と連携を強め、両市の市民感情の隔たりを縮めていく努力も必要でしょう。

商工会議所や青年会議所の交流や、各種大会などの複合主管もいいチャンスです。樽前山や支笏湖と両市を活用したマラソン大会、トライアスロン大会を共同で開催することも、市民レベルの交流として効果的なことだと思います。イベントなど様々な機会を捉えて交流の糸口を見つけていくことが必要です。広域行政や広域連携、交流や提携、協力、共働といった努力を経済の領域から市民に至るまで、多方面にわたって積み重ねる中から、最終目標である一体化、合併へと段階を踏んで進めばよいと思うのです。

いずれにしても、息の長い取組が求められます。
確かに合併特例の期限は平成17年3月までですから、あと3年もありませんが、焦る必要はありません。一歩ずつ着実な歩みを実現していくことこそが重要です。
できるところから、できるだけ早くすることは必要ですが、結果を性急に追い求めることは最終目標を逆に遠ざけてしまうことになりかねません。

行政、経済界のトップの優れたリーダーシップと努力が求められるところです。

8.苫小牧・新時代のまちづくり -むすびにかえて-

苫小牧市と千歳市は、樽前山を父にもち、支笏湖を母としてその裾野に開けた都市です。
今日まで道央テクノポリス機構や地方拠点都市構想などで連携をはかり成果をあげてきましたが、将来の合併までをも展望した動きまでには至りませんでした。
私たちをとりまく環境はこれまで見てきたように地方分権の進展や不景気、財政難、広域化に加え少子・高齢化の進行、国際化・高度情報化の進展などにより大きく変化しています。
このような社会の変化に即応し、新しい時代に対応した新しい発想でまちづくりを進めることが今まさに求められているのです。

これからのまちづくりを考えるとき、新千歳空港と苫小牧港を核としながら、苫小牧市・千歳市の境界をのり越えた多角的な開発と高度な技術を取り入れた多種多様な開発と高度な技術を取り入れた多種多様な産業の振興を図っていくことが不可欠です。
産業に活力を取り戻すことはまちの発展の原動力を産み、市民生活を支える土台となります。
先人は、千歳市に空港を、苫小牧市に港湾を建設したことで現代の我々に貴重な財産を残してくれました。
この財産をさらにもっと有効かつ最大限に活用することが現代の我々の使命でもあります。
30年から50年先のまちづくりを考える上でも、苫小牧・千歳の合併は是が非でも実現したい課題でもあります。

北海道における市町村合併は、総じて北海道の特殊性によって実現が困難視されておりますが、苫小牧と千歳の合併だけはおそらく唯一の例外となることでしょう。
私の力量不足で科学的、理論的に十分解明できなかった点も多々ありましたし、周辺町村をどうするのかは今後の課題として残っております。
しかし、だからといって合併の大義が揺らぐわけではありません。これからの合併運動を進めるかどうかは両市民の意欲にかかってくると思います。

郷土の未来をかけて、合併を少しでも前進させるために市民の皆様の真剣な議論が必要なのです。

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