市町村合併リポート ー前編ー

1.まえがき

最近、日本全国で市町村合併に向けた動きが活発になってきました。
北海道でも平成14年3月現在で、合併に向けた具体的な取り組みが行われている地域は13で、これに関係する自治体は61にものぼっています。
しかし、総じて北海道における市町村合併に向けた動きは本州と比較して、鈍いと言われております。何故でしょうか。
それは、まず北海道の広大な土地と人口密度の低さに起因しています。合併は双方にメリットがなければ進展していかないものです。1年の半分近くを冬の厳しい自然環境のもとで過ごし、一自治体が一県に匹敵するような広大な行政区域を持ち、過疎に悩む(道内自治体の3/4は過疎指定)北海道の市町村にとって合併のメリットを提示するのは、本州の市町村と比較すると困難であると言えます。むしろ合併によって問題は解決されるどころか、より一層深刻化することになりかねません。  

一方、国の合併特例は平成17年3月が期限となっております。あと3年もありません。合併協議会設立までの困難な道のりを考えると非常に厳しい時間的制約です。
ところが、苫小牧市民の中に合併に対する気運の盛り上がりや動きが見られるのかと言えば今のところはごく一部にあるのみで、あとは全くないと言っていい状況です。
国は補助金の削減や交付税を抑制する方針を打ち出し、国の財政支援に依存しない地方の自立を求めてきております。
このことは地方自治体にとって、変革を迫られているものと私は受けとめるのですが、どうも関係者の危機意識が伝わってこないのです。
地域の将来を考えた時、地方の危機克服の取り組み、すなわち合併問題にほとんど無関心の状態ではたして良いのでしょうか。
苫小牧市も最近になってようやく重い腰をあげ、合併に関する検討を開始したようですが、肝心の合併の相手については特定しないで調査・研究を行うのだそうです。
組む相手によって中身がガラリと変わってくるのが合併です。市のとりくみがどれほどの成果をあげられるのか、今後を待ちたいと思います。

このページは時代のトレンドとも言える合併問題を契機として、苫小牧市と千歳市の生き残りをかけた方策やあるべき姿を模索する中から産業、経済の領域や道央圏の再構成にまで踏み込みながら到達した最終目標、すなわち苫小牧市と千歳市の合併とその手法について提言したものです。
皆様のご考察の一助となれば幸いです。

2.広まる合併論議

私たちの生活や産業は道路交通網の発達や高度情報化時代を迎え、市町村や支庁の枠すら越えて広がるようになりました。
これに伴い、行政需要もより広域的な内容に変化することになり、必然的にまちづくりも広域性に対応していかなければならず、従来の行政区域を拡大することをも含めた見直しが必要となってきております。
このようなことを背景としながら、最近では特に市町村合併、支庁制度改革、道州制の導入など、行政区域を大幅に見直そうとする動きが顕著になってきました。
それには次のような要因があげられます。

まず、財政上の理由です。
国と地方合わせて666兆円にも上る巨額な借金を抱える財政状態があげられます。
地方交付税の減額や人口の減少による税収減が見込まれる中、住民の多様化、増大するニーズに応え、行政サービスの水準を維持していくためには、思い切った財政構造改革を断行しなければ、とても対応できるものではありません。
同じ施設をどこのまちにも作るというムダを省き、少ない人、金で最大の効果をあげるという効率的、合理的な行政の展開が求められているのです。

次に、地方分権の拡大によるものです。
地方分権が進み、自治体は自己決定、自己責任のもとに政策課題を把握し立案するとともに行政サービスを提供することになりますが、そのもとになるのは行政の自立です。国や道に依存することのない自主的な意志決定のシステムの確立、財政基盤の確立など地域の責任ある選択や行動が求められるのですが、それには自治体の体質強化と規模の拡大が必要不可欠になってきます。

三番目に社会的な特性によるものです。
近年特に著しく進行した少子高齢化は人口の減少や経済成長の停滞をもたらす一方で、医療や福祉などの社会保障費を増大させる要因となっております。
エンゼルプランや介護保険制度など、市町村が提供する医療や福祉サービスの内容が次第に高度かつ多様になるとともにその水準を確保していかなければならず、財政問題も含めた体制整備が求められております。

このような課題を克服していくためには、合併は避けられません。
合併は、双方の特性を引き出し、それらを量的にも質的にもより有効かつ増大化させ、その結果、財政、人口、経済、福祉などの重要課題が規模の拡大によって解決することができるのです。
その一方で施設の重複を避けるなど合理化、省力化、重点化が可能となり、効率的、効果的な自治体運営が可能となります。

千歳オフィスアルカディア

・企業集積が進む千歳
 オフィスアルカディア

苫東工業基地周辺

・苫東工業基地周辺の
 未利用地活用が課題

具体的には次のようなことが期待されます。

  • より大きな市町村の誕生が地域のイメージアップにつながり、観光振興や環境問題など広域的な調整が必要な施策が展開されることにより活力のある広域的なまちづくりが可能になります。
  • 産業、経済面で連携交流が促進されることで新たな展開が可能になったり、相互補完による生産の増強や若者の定着が期待されます。
  • 財政規模の拡大により重点的な投資が可能になり、より大型なプロジェクトが実施できるようになります。
  • 行政経費が節約され、より少ない経費で効果的な行政サービスを提供することができるようになります。
  • 都市基盤整備、施設整備などを効率よく実施することができます。
  • 行政職員の資質向上やより高度な能力を有した職員の確保にもつながり、行政サービスの向上が期待されます。
  • 広範囲な公共施設の利用が可能になることで住民へのサービスが向上します。

以上が主なものとしてあげられます。

3.改革なくして再生なし

明野工業団地

・明野工業団地

長引く不景気。不況脱出の手がかりを一体どこに見出したらよいのか、その糸口すら掴めないのが現状です。
公共事業の削減、金融機関の貸し渋り、企業倒産の増加、雇用不安、失業者の増加、工業団地の売れ残り、企業進出の低下と他地域への転出など、私たちの経済活動から生活に至るまで、暗い話題をあげれば枚挙に暇がありません。

一方、明るい話題といえば、探し出すのに苦労するほど乏しいのが実態でしょう。
バブル経済崩壊後の景気低迷をどう乗り越えたらよいのか、私たちのような政治に携わる人間ばかりでなく、経済界や市民に至るまで、本当に真剣に考えなければならない重要なテーマです。

北海道の好景気の波は本州より3年遅れでやってくると、昔はよく言われたものです。今回の不景気もそうなのでしょうか。
遅れてくるのは止むを得ないとしても、本当に回復の波がやってくるのでしょうか。
私は、ノーだと思います。何故ならば、今回の不景気は過去のどの不景気とも中身が違うからです。

その理由は第一に一次産業と合わせて北海道経済のもう一本の柱といわれる公共事業費が1割削減され、この穴埋めをする産業が成長していないこと。つまり経済の屋台骨が揺らいでしまっていることです。

第二に比較的高コスト構造であった北海道経済が低コストの中国をはじめとする東南アジア諸国との国際競争の真只中にたたき込まれ、太刀打ちできないであえいでいることがあります。

第三に生産現場としての北海道の魅力、すなわち広大な土地、豊富で低廉な労働力というスローガンが色あせ、企業進出が減少したばかりでなく、進出した企業が海外も含む他地域へ転出しだしたことです。

まだいくつかありますが、このたびの不景気は北海道経済の構造的な脆さ、(官依存と高コスト構造、意識改革の不徹底)に起因していると言わざるを得ません。
ここを克服しない限り、経済の再生はあり得ないのです。ただ手をこまねいてじっと辛抱しているだけでは、景気の回復はなし得ないのです。構造改革、意識改革をしなかったら企業も地域も生き残ることはできないのです。

自治体にも同じ事があてはまります。
財政問題から近い将来必ず訪れることになる自治体経営の危機をどう乗り切るかが鋭く問われています。
その意味で最も現実的で有効な方策は、市町村合併による規模の拡大であり他に方法はありません。
問題は地域のリーダーがそのことにいかに早く気付き、行動を起こすかです。さらにどこ(合併対象)と組むことが、苫小牧にとって最良の選択になるのか、合併によってどういう将来像を描くのかが問われることになります。

答は自ずと明らかでしょう。地域の将来を切り拓き、発展的な未来をめざそうと積極志向に立つならば、パートナーは千歳市しかないのではないでしょうか。

千歳美々ワールド

・千歳美々ワールド

4.苫小牧と千歳の合併の意義

苫小牧西港

・苫小牧西港:国際コンテナの取扱いが急増している

新千歳空港

・新千歳空港:世界各国から人が集まる

苫小牧市と千歳市は、道央圏の南半分を占め、北海道最大の空港と港湾を持つ生産と物流のまちです。
土地や水や自然条件にも恵まれ、北海道ばかりでなく我が国の経済拠点として成長できるポテンシャルを秘めた地域でもありますが、残念ながらその能力を全面的に開花させているとは言い難い状態にあるのも事実です。
それは、お互いの連携がないからです。目的を共有して協力しあう態勢ができていないために、それぞれがばらばらの方向を目指しているのです。
千歳は札幌圏を向き、苫小牧は海の彼方のあらぬ何かを求めているように見えます。
この構造的な不景気、企業進出の低迷や設備投資の減退、雇用不安など隣接する両市に共通する深刻な問題をどう解決したらよいか、少なくとも協力し合って解決しようとする姿勢は必要なのではないでしょうか。今までとは違う新しい思い切った手法をとらなければ、この難局は打開できないのです。
それが両市の合併を目指す第一の動機です。
また、北海道は札幌への一極集中が進んでいます。
人、物、金、情報の全てが札幌へと集まってきておりますが、同時進行して周辺の産炭地や農漁業地域の過疎化や疲弊を招きました。
都市が一極的に肥大化して終いに衰退した例は、歴史に多くを数えることができます。適度な競争がなければ、偏ったいびつな成長を遂げることになり、停滞や崩壊を招く原因になってしまうのです。
その意味では、札幌への対抗軸が必要なのです。消費と流通と政治の都市札幌に対して、生産と物流と経済の都市、苫小牧・千歳を形の上でもくっきりと浮かび上がらせるべきです。
北海道経済というステージから見ても戦略的、積極的な意味を持つものが両市の合併であり、これが第二の動機なのです。

第三の動機は、合併のスタイルにかかわることです。
道の示した合併パターンを調べると、財政上、行政効率上の観点からの合併(比較的弱い者同志が肩を寄せ合う形)であるとか、大都市に周辺町村が吸収される形の合併であるとか、おしなべて合併によって双方のポテンシャルを引き出す積極的な効果よりも地域や自治体を守るという防御的、相互扶助的な意味合いが強いのです。
その延長線上に市町村合併における北海道特例や二級町村制の議論がでてくるのだろうと思います。

しかし、苫小牧・千歳の合併はこれらの次元とは違うのです。
両市とも人口増加地域であり、財政力も強く、企業集積が進んだ経済力のあるまちです。それをあえて合併するのです。
つまり強い者同志が合体して1+1が2ではなく、3や5にも飛躍させる合併を志向するのです。市町村の過酷な生き残りをかけた競争の結末に、光明が射してくる思いはしませんか。これが本来の意義のある合併だと思うのです。

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