苫小牧港をスーパーハブ港湾へ

2006-01-13

苫小牧港は昭和38年に開港以来、北海道の海の表玄関として目ざましい発展をとげ、現在では年間の貨物取扱高が1億トンを超える(数字は平成16年末現在)など、北海道はもとより東北も含めて最大の港湾に成長した。 1億トンという実績は、道内の全港湾の貨物取扱高の実に45%を占めており、全国でも第4位の実績である。
港湾の発展は関連する様々な業種の伸展を促してきた。陸上の運輸部門では苫小牧に本社や出先を持つ業者の数が、全道一多い。 また、港湾が出来たことで企業の進出が活発になり、石油精製、アルミ、自動車などの日本を代表する企業の立地が進み、苫小牧港の周辺は苫東も含めて全道一の集積を誇っている。 その結果として製造業出荷額は、札幌を抜いて第1位となっている。 これからは苫小牧を含めて、千歳や室蘭との連携を深めながら、企業集積のメリットを次の発展にどうやってつなげていくかが問われるだろう。 行政のコーディネイト機能がもっと発揮されてもよいのではないか。北海道経済の致命的弱点と指摘されてきた第二次産業の弱さを克服する努力は、まだまだ続けなければならないと思う。

苫小牧港の地理的優位性

先般、私はある経済界の方から、変わった地図を見せてもらった。この地図はふだん私達が見ている北が上、南が下にある地図とは違って、ロシア側(北西)から日本を描いたものだ。つまり、位置関係が逆転しているのだ。 この地図を見ると今まで全く気付かなかったことが解ってくる。例えば、北海道と関西、九州方面を結ぶ海路を比較すると、日本海ルートがほぼ直線であるのに対して、太平洋ルートは大きく迂回しているのだ。日本海回りの方が太平洋回りよりどれだけ近いことか、一目瞭然なのだ。
現在、世界の海上物流の最大の流れは、東南アジアや日本と北米を結ぶルートである。シンガポール、香港、上海、釜山などのハブ港から出発して、日本海を通り津軽海峡を横切って北海道の太平洋側に出て、千島列島、アリューシャン列島沿いに北上して北米の西海岸に到達する。 メルカトル図法に慣れた私達にすれば、遠回りではないかと疑問をもってしまう北回りのルートこそが実は最も近く、そして海が荒れても島陰をを利用することができて安全らしい。 奇しくも、国内物流の最短最速ルートは、国際物流のルートとぴったり重なっていたのだ。この日本と世界の物流の大動脈上に位置しているのが苫小牧港である。 それも、北米側から日本に入ってきた時には玄関口に、東南アジア側から北米に向かう時は出口に位置している。だから日本で地理的に最も恵まれた場所にあるのが苫小牧港とも言える。 北米から日本向けの貨物はいったん苫小牧港に全部おろしてしまい、ここから行き先別に太平洋回り、日本海回りに区分けして配送する(内航フィーダー)、帰り船で日本各地の貨物を苫小牧に集結して北米向けの大型船に積み込む。 誰が考えても最も効率的、効果的な物流システムではないか。ところが実際はそう進んでいない。

中枢港湾になれない苫小牧港

わが国の港湾行政の位置づけからすれば、外国に対して日本を代表する港としているのが、東京湾、伊勢湾、大阪・神戸と北九州・福岡の四か所で、これらは国際中核港湾と呼ばれている。 中枢港湾と中核港湾、一字しか違わなくとも中味の違いは限りなく大きい。 A級とB級くらいの差がある。国は、苫小牧港には目もくれずに、東京、大阪、名古屋、北九州を国際物流の拠点港、つまりスーパーハブ港に位置づけた。 確かにこれらの港の背後には巨大な工業地帯があり産業が集積している。出すものも入れるものも莫大だ。 従って港湾としての存在意義は十分にあると思う。しかし、物流の側面から見た時に、コストや効率から言えば、問題がないとは言えない。 特に北九州などはいかがなものか。狭い海峡を挟んだ向こう側には、釜山や上海という巨大ハブ港湾がある。この二港はいまやライバルとして激しく凌ぎを削っているのに、そのすぐ目の前に新たなハブ港をつくる意味があるのだろうか。 中国や韓国を代表するハブ港に伍して北九州港は国際物流の激しい流れの中を、戦っていけるのだろうか。私は大きな疑問を禁じえない。
さて苫小牧港がスーパーハブ港としての機能を持つとしたら、私は日本の他港と違ってトランジット(積み替え)機能を主力としたほうがよいと考える。 苫小牧港に限らず、北海道の港湾に特徴的なことは、入れる貨物はあっても出す貨物が少ないということだ。これは製造業の弱さ、産業集積度の低さという北海道経済の根本的な問題に起因している。 つまり、背後の経済力はあまりあてにすることができない。 従って、地理的優位性を生かしたトランジットに頼るしかないと思うのだ。経済ではなくむしろ物流に主眼を置いたスーパーハブ港をつくることが、将来の苫小牧港の進むべき道であると思うのだ。

新しい発想でスーパーハブ港への昇格を

ではどうしたらスーパーハブ港への昇格が果たせるのか。自助努力の部分と、新たな取り組みの二つの方向が求められる。 自助努力については船舶の大型化に対応した大型大深水岸壁、大型ガントリークレーンなどハード面での更なる整備が求められることは言うまでもない。その上で 他港との競争に負けないための様々な努力が必要だ。いつ何時、どんな貨物でも素早く積降しができる態勢づくりが求めらる。経済界、労働界、行政などが、一体となって取り組まなければ実現は難しい。 また、苫小牧港は、東西両港があるのにもかかわらず、その機能分担が明確でない。目先の採算性や効率性に目を奪われて、将来の展望をおろそかにしてはいないだろうか。 苫小牧港を単に北海道にとってのみの主要港湾で終わらせるのか、あるいは国際物流の拠点港として展望するのか、もう一度確認したほうが良い。
また、政治的パワーを結集することも求められるだろう。中央省庁に対する発言力のある政治家を育てることとあわせて、もっと苫小牧港の優位性をアピールする作業も必要だが、ほとんど手付かずの状態だ。 地元のみならずオール北海道としての経済界あげての取り組みが求められる。
さらに、私は港湾の一部あるいはかなりの部分の運営について、新しい手法を導入すべきであると考えている。 苫小牧港の場合、港を管理運営するのは苫小牧港管理組合という行政体だが、例えば築造したターミナルのうち、岸壁などを除いて、ヤード、倉庫、クレーンなどは民間に、それも海外資本も含めた国際競争入札で任せてみたらどうか。 ハチソンなどの香港資本が苫小牧港の運営に参画するとなれば、新たな取扱貨物が増えるなど、効果が上がるかもしれない。国際競争の社会に思い切って身を投じてみる勇気が求められていると私は思っている。

北海道の将来を左右する苫小牧港

北海道は今、未曾有の財政危機に苦しんでいる。赤字債権団体への転落、すなわち自治体の「倒産」とも言うべき緊急事態に直面している。 歳出の削減に関心が集まっているが、こういうときだからこそ、私は歳入面での新しい思い切った発想の転換が必要だと思っている。 例えば、北海道は近い将来における道州制の導入を真剣に検討している。新しい制度に変わった時、真っ先に問題になるのはやはり財政運営だ。 財源をどう確保するか、最重要課題であることは間違いない。
それらの課題に貢献するのが苫小牧港であり、港の周辺の企業群である。
北海道経済を活性化するためには、リードする基幹産業の層をもっとぶ厚くしていかなければならない。 食と観光だけでは不十分だ。 もっともっとリーディング産業の幅と厚みを増していかなかったら全体としての元気はでてこない。 そんな時に港の果たす役割と価値は大きい。単に物流機能ばかりでなく、製造業はじめあらゆる方面への波及がある。だから、私は苫小牧港をもう1ランクも2ランクもレベルアップしていかなければならないと考えるのだ。

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