新しい北の街づくり

2005-12-20

現在、錦岡の明徳町に社会福祉法人ふれんどが、ケアハウスを建設中だ。ふれんどは医療法人社団玄洋会の姉妹法人で、道央佐藤病院が医療面でバックアップしている。 この施設の特徴は、ケアハウスだけでなく同じ敷地の中にショートステイ(短期入所)、グループホーム、デイサービス、訪問介護、居宅介護支援などの様々な機能が複合的に配置されていることにある。 来年4月にオープン予定だが、私はこの施設と、施設の目指す理念に大きな期待を持っている。

核家族化の問題点

高齢者福祉に関する国の方針は居宅介護であり在宅福祉だ。財政難から施設建設を極力抑えようという意図によるものだが、北海道にはマッチしたやり方とは言えない。なぜなら、北海道は日本一、核家族化が進んだ土地柄だからだ。家族だけでは高齢者、障害者の面倒を見る力に乏しい。本州のように3世代同居が残っているなら在宅福祉も可能かもしれないが、北海道では無理な話だ。(子育てもしかりだ。)そこで どうしても施設が必要となってくる。とは言っても預けっぱなしで良いかというとそうではない。家族との面接、食事などが、入所者にとってもいい影響を与えるので、施設の近くに住居があると行きやすくて便利だ。かくして施設は郊外から街の中心部に出ていくことになり、入所者の様々な症状に対応できるような多機能型へと変化することになる。
こんな予測から多機能、複合型の施設計画が決まったそうだ。 このコンセプトは単に高福祉時代の要請に応える形で、キメ細かく行われることを物語るばかりでなく、様々な地域課題(時には国民的課題)にも、対処しうる可能性を秘めている。 例えば、住宅が増えてくれば、都市機能の充実が求められることになり、 空き地を商業施設などに活用することも可能だ。ただ、今までの街の生い立ちと違って、あくまでも福祉を核にして街ができているので移動や人口減少の心配がない。 今どの都市でも中心部の空洞化問題を抱え、大型店の撤退や商業の衰退に悩んでいる。この原因は、経済活動や交通機能を核として街をつくってきたから、これらに支障を来すと街全体がダメージを受けてしまうことによる。でも医療や福祉を核として街をつくればそうはならない。なぜなら人間は必ずそこに世話になるからだ。特に高齢になればなおさらのことだ。一度、医療や福祉施設のそばに住んでしまうと、便利さに慣れたとえ世代が替ったとしても引っ越すことは少なくなるはずだ。
しかし、一方で家を建てることはそう簡単にできることではないのも事実だ。 そこで、新しく移住してくれる人を外部から探してきたらどうか。 時あたかも2007年問題、つまり、団塊の世代の大量退職時期を間近に控えている。経済的に比較的ゆとりのある「初老世代」に、安心便利な福祉、医療機関の近くに住んでもらうというプランはどうか。 長期間住まなくても短期、一時滞在でも良い。移住を希望する人たちには決して悪い条件ではないはずだ。

北の大地への移住促進事業

戦後の数年間、ベビーラッシュの時期に生まれた大勢の子供たちを団塊の世代と呼んでいる。この人たちは、今日まで大人数の中で鍛え抜かれた競争力と圧倒的なパワーで、戦後の歴史を色彩ってきた。 学生運動で日本をあわや転覆する寸前まで追い込んだかと思えば、日本経済発展の原動力となる企業戦士として大活躍してきた。私も、団塊の世代より少し下の世代にあたり、彼らの恐るべきエネルギーを目の当たりにしながら、後塵を拝してきた。
その彼らが、もう間もなく現役を降りようとしてる。ピークとなる昭和22年から24年生まれの人たちの数たるや全国で680万人、東京、神奈川の首都圏で110万人もいる。 彼らはきっと第2の人生に向け、新しいステージでの自分の生き方を考えているはずだ。都会に残る者、都会の周辺に行く者、全く違った土地や環境を求める者。 いずれにしても自分の人生に対して明確な意思を持ち、力強く第2の人生に突き進むはずである。 それが、彼らの世代の特徴だから。
さて、首都圏に住む団塊の世代にアンケートを実施した結果によると、北海道に住んでみたい人や季節限定でもよいから住みたいと思っている関心層は、実に8割を占めたと言う。 また別の調査によると、住みたい場所を都道府県別に聞いたら、1位は沖縄県で2位に北海道が入ったそうだ。 移住先としての北海道への関心は低くないようだ。
こんな状況を見越して、北海道では「北の大地への移住促進事業」と名づけて移住先となる市町村といっしょになり、団塊の世代への働きかけを開始した。 伊達市などはその先進地としてすでにいくつかの実績をあげており、移住、あるいは長期・短期の滞在例がでてきているようだ。
ところが、わが苫小牧はどうか。市の福祉担当のある幹部は、「高齢者は医療費などの出費が多く、効果は少ない」という理由で、移住促進事業に全くヤル気を見せていない。団塊の世代の移住による経済波及効果は約5,700億円、社会保障費等の公的負担約1,200億円という試算があるのにもかかわらず、何をもってマイナスが多いと言うのか理解できない。
期待できるのは経済効果だけではない。人口の増加は無論のこと、新しい発想、文化、教養の持ち主が移住することで、知的、精神的に地元の人々にどれだけ刺激が与えられ、活性化されることか。 企業誘致で一定期間住むことになる人達とは違った形で、街づくりや人づくりに貢献するはずだ。
一方、移住する側にも不安や悩みは沢山あるに違いない。 生活環境が一変するわけだから、土地や住民に順応できるかどうか。新しい土地で、パートナーと一緒にやっていけるかどうか。医療は?福祉は?あげればキリがない。
さらに、都会に長く住んだ人達には、様々な要望もあるだろう。 人生の充実のための旅行やスポーツ、レジャー、知的好奇心の満足、自然との触れあいや生産の喜び。少なくとも最低限の都市機能は備わっていた方が良い。 これらをある程度満たすためには、どこでもいいというわけではない。地方都市あたりに限られてくるのではないか、そう私は推測している。幸いにもわが苫小牧には、苫小牧駒澤大学という四年制大学があるし、温泉、ゴルフ場にも恵まれ、登山や農作業も可能だ。 高速道路を利用して道内各地に行けるし、空港や港にも近い。条件には非常に恵まれている。そして苫小牧への移住促進事業を展開しようとするNPO法人も活動を始めたと聞く。 活動のこれからの目標は、地域のメリットを打ち出していくことに加え、移住を望む人たちの不安や悩みをケアすることも重要になってくるだろう。
医療や福祉を核とした地域づくりという考え方はいまや、様々な問題の解決策をとりこみ、地域の条件をプラスして、都市づくりへと昇華した。私は及ばずながら、この事業を推進する原動力になろうと思っている。 たとえ地元の自治体の協力が得られないとしても北海道を動かすことはできるから、作業は可能だ。新しい北の街づくりに地方都市の将来の可能性を求めていきたいと思う。

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